おこもりさんも大海の夢を見る

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【一部ネタバレ有り】「嗤う闇」乃南アサ / 生活や人生に根ざした中短編集

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「女刑事 音道貴子シリーズ」第四弾。

30ページが短編の目安だと、随分昔どこかで読んだ。とすると「嗤う闇」は60ページくらいのが4本だから、中短編ということになるだろうか。

カバーの折り返しには短編集と書かれているが、このシリーズの前2作の短編よりは長い。長い分、少し読み応えがある。

 

「その夜の二人」「残りの春」「木綿の部屋」「嗤う闇」の四編。

 

「木綿の部屋」は「凍える牙」でバディを組んだ、皇帝ペンギン滝沢おじさんのプライベートな話で、貴子はそれに付き合わされる羽目になる。事件は起きないが、家庭内トラブルとしてはなかなかの代物だし、滝沢おじさんの長女がちょっとスリラーしている。

問題を起こすのは長女の夫、つまり滝沢氏の婿に当たる男なのだが、私は長女の方が怖かった。実際にこういう女性居そう、な感じが余計に怖い。

 

「その夜の二人」は、派手な親子ゲンカの傷害事件から始まり、とても平凡で凡そ犯罪や事件などと縁が無い大家さんの妻の殺人未遂事件が起きる。

貴子は昇進と異動により、隅田川東署の刑事になっている。東京の東側ということで、全編が都会だけれど下町の雰囲気がある。

二つの事件も、下町ならではな事件だ。東京も西側の新興住宅街だの、マンション地帯だのでは起きない事件と言える。

乃南アサは生活感を書くのが上手いと思う。リアリティのある作品は、事件が派手じゃない分、身に迫る。うちの防犯って大丈夫かしらと、窓の鍵を確認したくなる感じだ。

 

「残りの春」は、昔のスターである老人が今時の若者と路上で喧嘩になるということから始まり、ある女所帯の家への悪質な嫌がらせという、小さな事件だ。

書かれたのは2002年。その時代感が出ている。

老人が元気で、若者は威勢の割にさほど暴力的でもなく、離婚率が高くなって実家に子連れで帰っている娘がいたり、家族に一人くらい自立できていない大人がいたり・・・。

ちょっと閉塞感がある雰囲気だ。

キャリアの一年生年下上司に貴子が苦労するあたり、同情を禁じ得ないが、主役だけあって、上手にそれも乗り越えて懐かれたりする。

その辺りはやはり、フィクションだ。現実には威張ってる割に実は真っ新、な若者なんて、お目にかかれない。

 

表題にもなっている「嗤う闇」は、連続レイプ事件。これは怖かった。

防犯を意識する作品だ。女性の一人暮らしは、住む物件の安全性や、外からそうと分かるようにしないとか、大事だね。

傘立てにピンクの傘一本とか、表札を可愛いプレートにフルネームなんてしないこととか。

・・・若い頃から防犯意識が高い、というより人間不信な私は、刑事さんに褒められるほどガードが固かったので(警察手帳を見せられてもドアを開けずにご迷惑をかけた前科あり)心配はなかった。

部屋の中を見られても女性の一人暮らしとは分からない状態だった。カーテンを含め、女性らしい持ち物が無いので。

今でも人間不信全開で、それでまあ、まともな生活が送れずにいるわけで。

何事も行き過ぎは宜しくないが、脇が甘いのも、ねぇ。警察手帳見せられたって、本物かどうか分からないし、ねぇ。

 

どれも少し長めの短編で、話がトントン進んでくれるから、トントン拍子で読み進められた。あれこれ推理する余地もあったりして。

このシリーズの中では、電車などの移動時間で読むのにオススメ作品と言えるだろう。長編は休みの日にでも一気読みしたいので。

 

嗤う闇―女刑事音道貴子 (新潮文庫)