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【ネタバレ有り】「未練(女刑事シリーズ)」乃南アサ / 短編で重い事件は厳しい

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女刑事 音道貴子シリーズの第四弾「未練」。6編収録で、刑事の生活に焦点を当てた話が多いものの、第二弾の「花散る頃の殺人」よりも事件が起きるので、読み応えがあった。

ただ、ただね。現時点で不満が二つある。

 

一つは「立川古物商殺人事件」と「殺人者」という二編が繋がっているのだが、解決されないのだ。

「殺人者」で同じ事件が出てきたから、これは解決するかと思いきや、解決されない。いや、筆者としては解決を差し出しているのかもしれないが、スッキリしない。

それでいい読者もいるのだろうが、私はキッチリ終わらせて欲しい派だ。

シリーズ第五弾も短編集なので、そっちで解決されるだろうか。スッキリサッパリさせて欲しい。

 

二つ目は「聖夜まで」という短編だが、小学二年生男児が保育園女児を悪気なく殺害してしまう悲惨で重い事件を扱っている。

そこには児童虐待が原因となっていて、加害男児を虐待していた母親が自殺してしまうのだ。

しかも加害男児はさっさと保護されてしまい、死んでしまうと知っていて何故被害女児に砂を食わせ、あらゆる場所に砂を突っ込んだのか、判然としないまま棚上げ。

だから、虐待についても殺害事件についても、動機が宙ぶらりん。まあ、察することは出来る。出来るがしかし、カチッと終わらせてくれよー感が否めない。

で、もうひとつ、この話で出てくる「隣人」の罪深さについて触れていないのが気になる。上の子がいなくなって泣き声がしなくなったと言った隣人が、最近また始まったと言うのだ。下の子が事件の後から激しく泣くようになった。それって、それって、通報しないんかいっ!

男の子の時に厳しく躾けてるのかなって思って、センセーショナルな事件が起き、今度は同じ家で女の子が激しく泣いている。それ、やべえと思いませんか。なんだが、そこには触れられていない。

まあね。実際に通報するって勇気がいるからね。戸建て住宅だと近所づきあいもあるしね。難しいのよね。

でもね、このひどい虐待に焦点を当てて、殺害事件はムニャムニャとしてしまうなら、そんなに凄惨な殺され方にしなくても良かったんじゃないかと思うのだ。

死ぬと分かっていたけど泥団子食わせて窒息死、で充分センセーショナルではないか。

実に遣る瀬無い。後味が悪い話だった。

これは、私が被虐待児だから感じた「嫌な感じ」なのかもしれない。親に虐待されたからって、弱い者に危害を与えるなんてしない。

しかもこの男児は親に泥団子を食わされていた訳ではない。親と同じことをした訳じゃないから、虐待が殺害の理由になっていないのだ。

殺してしまった理由に踏み込んで欲しかった。

そこ、短編で描くには難しいと思うのだ。ごっつい下調べが必要だろうから。でも、せめて親が泥団子を食わせていて、事件が泥団子食わせただけの事件だったら、少しは納得がいくので、そうしてくれたら・・・。まあ、マシなだけだな。

 

とりあえず、シリーズ第五弾で「立川古物商殺人事件」が解決されることに期待しよう。

 

未練 (新潮エンターテインメント倶楽部)