十年以上前のことになるが、感動した色がある。
それは温かみのある薄い桜色に近い色合いの部屋で、それ自体が芸術作品だった。
下に三色ほど近い色を出してみるけど、見えるだろうか。真ん中が「薄桜」。
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実際にはもっと淡い色で、黄色みも入っていたと思う。
一色ベタ塗りでは無く、微妙に同系色を塗り重ねていったもののようだった。
真ん中に椅子が置いてあって、そこに座って呼吸を吐くと、
なんとも言えない、穏やかな気持ちになった。
涙が出そうなほどの安心感がそこにあって、当時かろうじて外出ができるものの、
病状が進行していた私は、そのまま眠りたいと思ったほどだった。
画家になった同級生の個展を観に行った時、その地下のスペースで
美大生がひっそりとやっていた個展だった。
作品は部屋そのものなので、一つだけ。
値段はついていなかったが、財力があれば、私は金にモノを言わせて買ったことだろう。
でもって、組み立てて中に入って、死ぬまで出てこられなかったかもしれない。
何しろ、後にも先にも、あんな気持ちになったのは、今の所あの一回きりで、
似たものも思いつかないため、言語で表現するのに困っている。
イメージでしかないけれど「胎児の見ている幸せな夢」という印象かもしれない。
いや、「胎児にはこんな心地でいてほしいという願い」かもしれない。
もしも、死ぬまで引きこもるなら、あの部屋がいい。
今週のお題「わたしの好きな色」